研究課題
ドイツ語の結果構文は、構文としてまとまった文法的カテゴリーを形成する一方で、その具体的な用例には意味的・統語的な多様性が認められ、ドイツ語における他の文法的カテゴリーとの連続性や競合関係を多面的に考察することが可能な構文である。今年度はこれまでの一連の研究成果を継承し、再評価した後に、結果構文と、いわゆる伝統文法で「結果の目的語」と呼ばれる文成分との隣接・近接関係を考察することを試みた。すでに仮定しているサブタイプ・モデルの中でも提示したように、結果構文中に生起する目的語は、動詞の表す動作・行為によって影響を受ける対象であるという意味で「被動目的語(affiziertes Objekt)」であるが、結果構文の用例が典型的なタイプから非典型系的なタイプの用例へと拡張を続けるにつれて、目的語は基底動詞の支配から離脱して結果状態の描写を受ける主題として、より前景化されていく。一方、結果の目的語は、動詞によって表される動作・行為によって初めて出現する対象を表す「被成目的語(effiziertes Objekt)」であり、中間段階を言語化することなく語用論的状況や世界知識などを背景に動詞の表す動作・行為の究極的な到達点・到達状態を表現するものであると考えられる。言い換えれば、結果構文では事態を引き起こす基底動詞と結果状態を表す結果句の相互作用によって目的語の最終結果状態が確定されるのに対し、結果の目的語は事態を表す基底動詞の意味作用のみで生起可能となる。「結果表現」というドイツ語文法に存在する巨大な意味場の中で両構文の棲み分けをさらに詳細に検討することで、動詞の作用による結果描写の可能性が解明できるのではないかと期待している。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Ten Cate, Abraham/Reinhard Rapp/Jurg Strassler/Maurice Vliegen/Heinrich Weber (eds.). Grammatik・Praxis・Geschichte : Festschrift fur Wilfried Kurschner.
ページ: 89-96