二十二年度は、八月と十一月の二回の台湾中部に居住するサオ語の現地調査を行い、次の二点について聞き取り調査および音声記号による文字化と書き起こしたテキストデータの文法分析をした。 (1)80代サオ語話者が日本語の仮名で記録したサオ語によるサオ族の伝承物語やサオ族の歴史に関する記録 (2)最終年に完成を目指しているサオ語話者同士による談話記録 (1)に関する音声記号による文字化と文法分析は、手持ち資料のすべてに関して、二十二年度に一応聞き取り調査を終えた。(2)に関しては、今後さらに手持ちの談話記録の書き起こしを実施していく予定である。 これらの文字化及び文法分析は、消滅の危機に瀕しているサオ語の本来の姿を明らかにする一役を記録に使われた日本語の仮名が担い、統治時代の日本語教育の意義を明らかにしうるものである。また、サオ語話者同士の談話を文字化して記録するということは、これまでに試みられたことがなく、最も自然なサオ語の姿を明らかにする非常に貴重な記録となっている。 研究成果としては、サオ族における伝承物語を80代サオ語話者に日本語で語ってもらい、その記録を公開した。また、サオ語における人を表す言葉の分析を行い、その分析をもとにサオ族の社会構造等について考察を行って発表した。そのほかに、サオ語における小辞sa、tu、ti、aについて、その文法的機能について分析、考察を行い、その機能を明らかにした。
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