研究課題/領域番号 |
22520454
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 証壽 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20176093)
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キーワード | 初唐宮廷写経 / 開成石経 / 字体規範 / 類聚名義抄 / 篆隷万象名義 / 実用例 / 字書記述 / 漢字字体 |
研究概要 |
本研究は、日本における漢字字体の規範の形成を、伝存する良質な字書に記述された字体規範と、初唐宮廷写経・開成石経・『日本書紀』写刊本に代表される標準的文献に使用された実用例の字体とを対照したデータベース構築により示すことを目的とする。漢字字体の字書記述とは字体規範を見出し漢字と「正」「俗」等の注記によって示すもので、『類聚名義抄』を中心資料に据えている。この目的を達成するために、本年度は、国内外の関連資料の調査を進め、研究発表・論文公刊を行って、特に次の2点の研究を推進した。 1.実用例との対比から見た字書記述の分析 漢字字体規範データベース(HNG)に掲載される標準字体の実用例と、『玉篇』、観智院本『類聚名義抄』等の日本・中国における字書記述とを徹底比較した。具体的には「寂」の字体を精査して、中国南北朝、初唐(宮廷写経)、晩唐(開成石経)の標準字体が異なること、日本文献に中国南北朝の字体の残存があること、中国・日本の古字書はそれらすべてを採録して字体の弁別を行っていることを明らかにした。実用例との対比から見た字書記述の分析に新たな方法を提案することができた 2.研究成果の発表と意見交換 日本語学会ワークショップ「文字研究における画像データベースの利活用」(5月神戸大学)、世界日本語教育研究大会(8月中国天津外国語大学)、人文科学とコンピュータシンポジウム(12月龍谷大学)、国際シンポジウム「字体規範と異体の歴史」(12月東京外国語大学)で関連の研究発表を行って、成果を公表するとともに、国内外の研究者との意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
漢字字体の字書記述と実用例とを分析する方法についてさまざま検討してきたが、「寂」を例にして明快に論述することが出来た。これによって字書記述と実用例との関係を考察する理論モデルを構築する見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
漢字字体の字書記述と実用例とを分析する方法について、事例研究をさらに進めて、従前の方法をより洗練し、字書記述と実用例との関係を考察する理論モデルを明確に提示したい。それらの成果を韓国の高麗大学校で開催される国際シンポジウムで発表する計画である。
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