本研究は、日本語学の立場から、平安時代に訓点の記入された仏典関係資料のうち、真言宗系統の訓点資料について、それを1つの資料群としてとらえ、そこに記入された訓点の言語の特性を解明することを目的とする。その際、この資料群全体をより小さないくつかのグループに分け、それぞれの言語の特性を分析し、その上でその結果を総合することにより、真言宗系訓点資料の全体像を明らかにしようとするものである。 本年度は研究開始に当たって設定した真言宗系訓点資料の4つのグループ(A大日経、大日経疏類)、B儀軌類、C空海撰述書類、Dその他)のうち、CとDに重点を置いて調査、考察を行うと共に、昨年度までの調査で最重要であると認められたAのうちの大日経疏についても、併せて調査、考察を行った。 その結果、次のような知見を得ることができた。即ち、C空海撰述書類については、極めて多数の平安時代に書写された資料が現存し、中には天台宗系寺院に伝わったものもあること、それらの多くには訓点が記入されていて、当時においてよく研究されていたものであると共に、現在の時点から見ても、有用であると同時に、平安時代の日本語の資料として重要なものも少なくないことが明らかになった。ただ、Dその他については、種々のものがあって、その全体的な性格についてはなお考究の必要のあることが判明した。 また、Aのうち、大日経疏については、数種の古写本について考察を進め、それらが日本語資料として有用であることが改めて明らかになったが、その解読文の一部を公表した。
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