22年度交付内定通知が10月、交付決定通知が11月という時期であったこともあって、当該年度内に論文等の形で成果を発表することはできなかったが、おおむね交付申請書の計画に沿い研究を進めた。 文法化の観点からは、形容詞系の容易表現「~ヨシ/ヨイ」「~ヤスシ/ヤスイ」や、動詞系の可能表現「~アフ(下二段)」「~キル」等について考察を進めた。特に前者については、単独用法の形容詞からの意味変化や、両者の使い分けの指摘変遷といった点についてかなりの程度考察を進めることができたので、この成果を早期に論文の形にまとめることを目指している。この考察を通して「~ニクシ/ニクイ」や「~ヅライ」との共通点・相違点の整理や、形容詞の意味変化の方向性・類型性に関する一般的な考察につなげること等の課題も得られた。後者については、共通の動詞に「~アフ」「~ヤル」が接続する場合の比較といった作業を通して、両者の意味・用法の違いに関する分析や、筆者の従来の研究の見直しと新たな位置づけを目指す方向での考察を進めた。こちらも引き続き考察を進め、23年度中に論文等の形で成果を発表する。 配慮表現との関係については、可能表現・難易表現が配慮のある「断り」の方略として歴史的にどのような位置を占めてきたかという問題に一定の見通しを得ることを目指した。近世の文献において困難表現「~ニクイ」にそのような用法があるのではないか等の見通しを得たが、まとまった論の形にするには更に用例の収集・分析を進める必要がある。
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