本研究の目的は、古代語名詞句の意味と統語現象との関係について記述分析することである。本研究の研究期間は4年間であり、平成23年度は2年目にあたる。前年度の研究成果を受けて、下記のような研究を行い、成果を得た。 まず、古代語名詞句の理論面の理解を深めるべく、数回の文献調査を行い、著書、論文等の情報を収集した。対象を古代語に限定せず、現代語の名詞句についても文献を収集した。さらに、やはり年数回の研究打ち合わせ会議を開催し、古代語名詞句の理論的問題について情報交換をおこなった。文法史の研究者だけでなく、古典文学の研究者との教示を得て、文化史的な側面からの理解も深めることができた。さらには、国立国語研究所の「通時コーパスプロジェクト」との連携によって、データ作成の効率化を図ることが可能となった。この点は、次年度以降の研究にとって大きな推進力となるはずである。 上記の検討を通して明らかになった課題として、「古代語の名詞句を言語単位のどこに位置づけるか」がある。従来の研究では、語と句と節との境界線についてはきわめて曖昧であり、その根本的な検討は手つかずのまま現在に至っている感がある。 本研究にとって、この問題を避けて通ることはできないので、そのための事例研究を行った。それを論文として、「古代語名詞句と語・節との関係-形態的緊密性の観点から」というタイトルで発表した。これが本年度、公表した研究成果である。その他、国立国語研究所でのワークショップの招待発表においても本研究の一部に言及した。 本年度の研究を総括すれば、理論面に重点をおいて成果を得たといえよう。一方、実証面たるデータ作成については、まだ構築の途上にあり、平成24年度においてさらなるデータの拡大に努めていく必要がある。以上が、研究実績の概要である。
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