本研究の目的は、古代語名詞句の意味と統語現象との関係について記述分析することである。本研究の研究期間は4年間であり、平成24年度は3年目にあたる。この年度では、前年度までの研究の進展を受けて、下記のような研究を行なった。 まず、古代語名詞句の理論面の理解を深めるべく、国立国会図書館(本館、関西館)で文献調査を行い、著書、研究論文、博士学位論文の情報を収集した。さらに、年数回の研究打ち合わせ会議を行い、情報交換を行うとともに自身の研究成果を発表した。文法史の研究者だけでなく、古典文学研究者、近代文学研究者とも情報交換を行った。研究成果の一部は、文法史研究会、国立国語研究所主催の配慮表現のシンポジウム、同研究所とオックスフォード大学上代コーパスプロジェクト(代表:フレレスビック教授)との共同開催のコーパス研究会で発表し、多くの有益な意見を得ることができた。また、7月から、同研究所の共同研究プロジェクト「日本列島と周辺諸言語の類型論的・比較歴史的研究」(代表:ホイットマン教授)のメンバーに加えてもらい、名詞句を他言語と比較しながら見ていく類型論的な視点を導入すること可能となった。 本年度の研究を総括すると、「理論面の理解を深め、調査データを拡張した」ということになろう。具体的には、名詞句の言語単位における位置づけを押さえた上で、個々の名詞句の記述を進めてきたことになる。とりわけ、「形容詞+コト」「動詞+ヒト」タイプの名詞句については、日本語歴史コーパスの充実とともに、データ構築が進められたといえる。次年度には、さらなるデータ拡張を行い、研究報告書として完成させる予定である。 以上が本年度の研究実績の概要である。
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