研究課題/領域番号 |
22520465
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
矢島 正浩 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00230201)
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研究分担者 |
揚妻 祐樹 藤女子大学, 文学部, 教授 (40231857)
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キーワード | 条件表現 / 上方・大阪語 / 江戸・東京語 / 原因理由文 / 従属節 / 中央語 |
研究概要 |
本年度の主たる成果は、つぎの1~3である。 1.接続詞的用法ソレダカラ類を取り上げ、同用法が語彙化するさまについて、原因理由用法の全体史の推移との関係から検討した。その際、上方・大阪語と江戸・東京語の、それぞれの歴史を比較する方法により、江戸語で先行してソレダカラ類の語彙化が起こっていること、明治以降の大阪語は江戸・東京語の影響下でソヤヨッテ・ソヤサカイ、さらにはダカラ類を用いるようになることなどが判明している。すでに前年度までの研究でも、接続詞的用法ソレナラ類、あるいは当為的表現ネバナラナイ類も、その歴史を把握し、説明するには、上方・大阪語と江戸・東京語の相互の関係を視野に入れる必要があることを指摘しており、この視座からの文法史研究が有効・必要であることが明らかとなりつつある。 2.条件表現史の変化を把握する上で、已然形+バの変質を理解することが重要であるが、そのことに大きく関与する原因理由用法の歴史について、近世中期までに起きた変化を主たる対象として検討を行った。同時期の変革には、未来に起こるできごとを原因理由の根拠とする方法が増えていることが関わっており、条件表現の史的展開を理解するにあたっては、表現方法め指向性の変化という視点から捉える必要があることを指摘した。 3.これまでの研究成果を総括し、大きく、具体的事態を離れた思考内で因果関係を捉える表現の増加、従属節の構成力の変化、中央語であることそうでなくなることの影響、新たな中央語たる江戸・東京語からの影響の受容などを軸として上方・大阪語の条件表現史が捉えられることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「地域間・位相間の交流」に関しては複数の論文にまとめる段階までいたっており、「条件表現史の記述」については原因理由用法の調査・考察を加えることができた。標準的言語史についても言文一致の問題が言語運用の歴史にどう関与するのか分析が進みつつあり、全体的にはもくろみ通りの進捗状況にある。ただし、当初の、調査資料の対象範囲を大きく広げていく方針については、再検討の必要を生じている面もある。
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今後の研究の推進方策 |
「地域間・位相間の交流」に関わる事象については、特に近代以降に力点を置いて、継続的に検討する予定である。なお、研究の中で、従属節の質的な変化という視点が重要であることが明らかとなってきている。当初の計画案では、本年度は、位相間の交流に注目すべく、標準的口語史として講義物の系譜を、また日常的口語史として京都語の実態を調査する方針であったが、まずは構文史的な観点からの分析を先行させる必要が生じている。ただし、近代以降の標準語史に関わる記述研究については重要度が高いため、研究分担者が中心となって、継続して進めていく方針に変更はない。
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