研究課題/領域番号 |
22520467
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研究機関 | 奈良産業大学 |
研究代表者 |
桑原 祐子 奈良産業大学, 情報学部, 准教授 (90423243)
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研究分担者 |
中川 ゆかり 羽衣国際大学, 人間生活学部, 教授 (30168877)
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 史料研究室長 (30212319)
黒田 洋子 奈良女子大学, 古代学学術研究センター, 協力研究員 (70566322)
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キーワード | 国語学 / 正倉院文書 / 訓読 / 言語生活 |
研究概要 |
本研究の目的は、正倉院文書に代表される実用の言語生活の中に、後世の日本語表記システム(漢字仮名交じり文)が成立していく契機があることを、具体的な事例に基づいて実証的に解明することである。そのため、正倉院文書の中に散見する下級官人や在野の技術者・非官人に光を当て、彼らの言語生活を記述した。 桑原祐子は、論文「正倉院文書の『笑』と『箟』」において、正倉院文書に残る3種の造営関係資料の分析を行った。現場の技術者や帳簿作成を行う下級官人たちが使用した言葉の中から細い竹を表す「笑(の)」に注目し、漢文資料と比較検討することによって、日本独自の漢字用法(国訓)について明らかにした。また、和製漢語とされている「早速」がどのような場において生じた和製漢語であったのか、ということについての研究を試みた。 黒田洋子は、論文「官人の思いやり」において仕丁の実態解明に関する研究を行った。律令官人制の中での仕丁の実態研究は、これまで充分になされていなかった。そこで、仕丁に関わる文書の表現分析を通じて人の動きを復原し、具体的な仕丁の実態を明らかにした。 中川ゆかりは、論文「奈良時代、下級官人が文章を書くとき-風土記中の引用の『者』と、語順の不必要な倒置をめぐって(上)」において、風土記と正倉院文書の語法についての研究を行った。両者に散見する引用末尾を示す「者」の用法や、語順を不必要に倒置する現象に注目し、漢籍などとの比較検討をふまえて、下級官人等の筆遣いを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正倉院文書中の下級官人・技術者・非官人に光を当て、彼らの言語生活を記述することが、本研究の目的のための基礎研究である。桑原祐子・黒田洋子・中川ゆかり、以上3名による3本の論文執筆および学会発表によって、下級官人・技術者等の言語生活の記述をおこない、さらに、日本語独自の漢字用法(国訓)・和製漢語の生成過程・上代日本語の語法の特質などを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1これまでの研究をさらに拡大し、多くの文書を書き残した官人の言語生活をできるだけ多く記述すること。 2文書が作成される場面・作成された時の状況を、できる限り明らかにすること。 3文書をやり取りする官人たちの人間関係を、実証的に明らかにすること。 以上の3点を念頭に置き、日本語をどのように記録し、表現したのかということを解明する。
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