本研究は、第一に江戸時代、漂流民が遺したロシア資料を中心に、日本語の方言や音韻を明らかにすることを目的とした。 第二にはロシア資料には資料毎にさまざまな特徴がある。ゴンザ資料、レザノフ資料、タタリノフ資料、漂流記関係資料、洋学資料などである。それらの特徴を明示的にして、日本におけるロシア関係の日本語関係資料の全体像を示すことを目的とした。 レザノフ資料については、前年度より継続し、前年度におこなった筑紫日本語研究会の口頭発表を2012.6「レザノフ「会話」からみた18世紀末石巻方言の敬語体系」(『筑紫日本語研究』2011)p49~p59で活字化した。また本年度、2012.7に岡山大学言語国語国文学会において、「一八世紀末東日本方言の敬語について」(岡山大学総合研究棟2F共同研究室)を発表し、その一部を2012.12「レザノフ「会話」からみた18世紀末石巻方言のマスとマスル」(『国語国文』 81-12)で活字として公表した。またレザノフ資料の敬語体系については、まだ未公刊であるが、近いうちに公表したいと考えている。 タタリノフ資料については、青森県調査によって、村山1965『漂流民の言語』記述の東奥日報の新聞記事が確認でき、新たな発見があった。青森県佐井村への現地調査によって村山1965記載の諸事実を確認することができ、現在は大変、不便な土地であるが、江戸時代は航路の中継地として繁栄していたこと、またタタリノフの父親の墓石の確認、ペトロワ論文の訳文などを入手でき、大変、有意義な調査であった。その結果やタタリノフ資料については、近いうちに公表したいと考えている。
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