研究課題/領域番号 |
22520472
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
堀畑 正臣 熊本大学, 教育学部, 教授 (30199559)
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キーワード | 室町中期 / 古記録・古文書 / 中山定親 / 『薩戒記』 / 記録語 / 記録語法 / 異名と唐名 / 漢語副詞 |
研究概要 |
平成23年度は、中山定親『薩戒記』(記録期間1418~43年)の記述研究を行った。1「記録語」では「有若亡」「淵底」「雅意」「邂逅」「涯分」「経営」「計会」「結構」「見来」「相博」「左道」「自愛」「併」「時宜」「入魂」、「生涯」「勝事」「如在」「如泥」「参差」「斜酌」「對揚」「逐電」「張行」「一二」「等閑」「同編」「如法」「比興」「秘計」「不合期」「奔波」「以外」「与奪」「隣単」「和讒」等が見える。2「異名と唐名」の「異名」では「歓楽(病)」「回禄(火事)」「五色(瓜)」「要脚(銭)」「龍蹄(駿馬)」が見える。「唐名(からな)」では「摂録」「摂〓」「博陸」「執政」「執柄」「大(太)相国」「左相府」「右相府」「内相府」「亜相」「黄門」「八座」「亜将」「羽林」「武衛」「金吾」「大丞」「戸部」「大理」「都護」「拾遺」「雲客」「侍中」「職事」等が見える。「異名」は多くないが「唐名」は多用されている。3「漢語表現・漢文表現」では「不可勝計(あげてかぞふべからず)」「豈~乎」「況~哉(乎)」「蓋是~也」「須~」「未曽有」等が見える。漢文表現は特に目に付かない。4「記録語法」では「副詞+以」(「共以」「甚以」「逐以」「適以」「早以」等)や「以~被~似って~らる)」、「被下~(くご/さる)」「伺気色(気色をうかがふ)」「有御~〔おだ~あり)」等が見える。なかでも「可被察下候(察しくださるべく候)」の例が、応永28(西暦1421)年2/3の白川雅兼書状に見え、恩恵的な補助動詞の用法として注目される。5「病の語彙」では「獲麟」「減気」「雑熱」「所労」「中風」「病気」「風気」等が見える。6「唐代口語」の残存では「大都(おおむね)」「自余(じよ)」「本自(もとより)」がある。7「漢語副詞」では「結句(けっく)」「須臾(しゅゆ)」「惣別(そうべつ)」「大概(たいがい)」「大略(たいりゃく)」「委細(ゐさい)」等が見えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「最低限、その文献の傾向がわかる2~3年分の調査を行い、記述する」という点では、中山定親『薩戒記』の傾向がわかる程度には調査は出来ている。調査語に限れば概ね進展しているといえる。しかし、全体的な観点から見れば、十分に進展しているとはいいにくい。『薩戒記』の記述は、有職故実に熱心な記述であり、儀式の記述が多い点が特徴的である。その点で、語彙的な広がりや言語上のおもしろさという点には欠けるという憾みがある。
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今後の研究の推進方策 |
「室町中期の四文献のうち、分量の多い文献(『康富記』、『薩戒記』、『兼宣公記』、『教言卿記』の順)から調査に取りかかり、分量の少ない文献を後に調査する。最低限その文献の傾向がわかる2~3年分の調査を行い、記述する。」としていたとおり、先に「最低限その文献の傾向がわかる2~3年分の調査を行い、記述する」ことを優先する。そして、四文献の年代の重なる時期の調査を優先することで対処したい。また、調査語の焦点を絞りながら、記録語法の「被下(クダサル)」や「有御~(御~あり)」、記録語の「生涯」の調査を優先させ、記述する。基本的には調査分量の調整で対応する。
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