平成25年度は山科教言『教言卿記』(記録期間1405~11年)の記述研究を行った。 1「記録語」では、「活計(暮らしを楽しむ)」「計会(困窮・貧乏)」「自愛(珍重に値する)」「斟酌(色々考慮する)」「相博(交代)」「損色(修理の見積書)」「籌策(仲介・仲裁)」「左道(粗末)」「時宜(将軍の意志)」「比興(つまらない)」「秘計(仲立ち・工面)」「与奪(譲る)」等が見える。2の1「異名」では、「回禄(火災)」「款冬(蕗)」「歓楽(病)」「五色(瓜)」「八木(米)」等がある。2の2「唐名(からな)」では、「亞相(大納言)」「黄門(中納言)」「戸部(民部卿)」「相公(参議)」「武衛(兵衛督)」「阿州」「相州」「丹州」「濃州」「飛州」等が見える。3「漢語表現・漢文表現」は、「或~或~」「抑(ソモソモ)」「宜(シク)~可(ベシ)」等があるが、漢語表現は特に見えない。4「記録語法」では、「以~被~(モッテ~ラル)」「被下(クダサル)」「被成(ナサル)」「有御~(御~アリ)」等が見える。5「病の語彙」では、「違例」「口熱」「シヤクリ病」「中風」「腹病」「疱瘡」「痢病」「療病」等がある。6「唐代口語」では、「向後」がある。7「漢語副詞」では、「委細」「一途」「慇懃」「厳重」「惣別」「早速」等が見えた。 その他では、「有難々々」「喜悦々々」「殊勝々々」「神妙々々」「祝著々々」「珍重々々」「不便々々」「無念々々」「目出々々」「面目々々」等の評価語を多用する。 また、日記の一年目に仮名の記載が多い。大きな仮名文字は自立語に多く、小さな仮名文字は付属語が主。使用されているのは「ニ、ニテ、ヘ、ヨリ、ヲ、トテ、モ」等である。これは小仮名文字がないと誤読されそうな箇所に使用される。また助動詞の「キ」が「青侍一人被召具キ」のように小仮名表記される。日記の記述になれた二年目頃から仮名表記は減少していく。
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