研究概要 |
今年度は、昨年度行なった一次資料の解読、整理、分析を基礎として、主に写本「単経音義」にみられる俗字について、図像文字(bitmap character images)を作成し、前年度から蓄積してきた「単字形音義」を基にしてデータベースを構築する。更に従来の俗字研究の成果とつきあわせ、日本の「単経音義」に現われる俗字を字形変遷の角度から具体的に分析、解釈する。即ち:1.中国の研究者(上海師範大学語言所陳五雲、南京暁荘学院苗〓)と共同で『新訳華厳経音義私記』(小川家蔵本,簡稱『私記』)の俗字についての全面研究を展開する。原稿(『新訳華厳経音義私記俗字研究』)は、合計十章から構成され、二名の共同研究者がそれぞれ一章、私が八章を受け持つことになっている。現在のところ、五分の四完成している。今年の五月初に終わらせるよう努力している。完成後中国の新世紀出版社に書稿を交付する予定。2.奈良時代華厳学僧による「華厳音義」は二種類あり、それは、(1)『新華厳経音義』(大治三年(1128年)の写本,簡稱大治本)(2)『私記』である。その中の「則天文字」について多角的に研究する。拙論「奈良時代日僧所撰"華厳音義"與則天文字研究」と題する論文は、中国社会科学院語言研究所『歴史語言学研究』第四輯(2011年11月)に刊行された;3.2011年6月11日-13日に中国天津南開大学にて開催されたIACL-19 (the 19th Annual Conference of the International Association of Chinese Linguistics)に参加し、「『新訳華厳経音義私記』與唐代俗字研究」と題する論文を発表した。 今年度の研究対象は、『新訳華厳経音義私記』が日本現存最古の写本音義のみならず、内容が非常に豊富な為、全面的に研究する必要がある。
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