研究概要 |
過去二年間での資料収集、調査、研究をベースに、本年度は、主として日本残存の重要な「単経音義」に用いられている俗字について考察する。従来の俗字研究の成果とつきあわせ、単経音義俗字を字形変遷の角度から分析し、解釈を続行する。今迄の成果としては、(1)『新訳華厳経音義私記俗字研究』と題する単行本にまとめた。現在迄既に四校済ませ、中国の新世界出版社が2013年6月に出版することになっている。(2)漢字訓詁学の観点から平安時代法相宗の学僧仲算撰の『法華経釈文』について論文二点書いた。即ち、①「『法華経釈文』漢字訓詁研究--以仲算“今案”為中心」。この論文の縮刷版は、2012年12月中旬に香港中文大学主催による MOVING FORWARD - International Symposium on Chinese Linguistics and Philologyにて発表し、全文は『アカデミア』文学・語学編 (93号,2013年1月) に刊行された。②「新羅僧順憬殘存音義考--以『法華経釋文』為中心」と題する論文を香港中文大学主催のシンポジウム論文編輯委員会に投稿、匿名評審を経て、論文集に採用されるにいたった。(3) 奈良時代の華厳宗学僧の手による「華厳音義」の則天文字及び韓国の資料である“新羅白紙墨書”の『大方廣佛花嚴経』を基礎として、「從兩種海外古寫本『華厳経』資料考察則天文字在海外之流傳」と題する論文を書き、佛教文献研究及び第六屆佛経語言学国際学術研討会(2012年10中旬,韓国交通大学東亞研究所及海印寺僧伽大学)にて発表した。その後、更に手を加え、会議の論文集に投稿。匿名審査を経て、本年8月に出版の予定である。申請時の計画では以上でも述べた単音義の漢字研究を土台にし『日本古写本仏経音義与漢字研究』なる一書を構想し、開始こそしたが、膨大な仕事のため、将来に完成を期す。
|