研究概要 |
本研究の目的は,『とはずがたり』の全自立語について,全事例の意味・用法を記述し,どの意味・用法にどれだけの事例があるか,どのような型の事例が多いか,ということを一覧することができる辞典を作成することにある。『とはずたり』の自立語の数量は,複合語・連語のまとめかたによって上下するが,異なり約6千,延べ約31千である。この辞典では,約6千の見出しのもとに,それぞれの意味・用法が記述され,約31千の事例すべてが列挙されることになる。 この辞典の効用は,意味・用法の記述を同時代に拡張する際にも,延いては歴史的記述を展開する際にも,堅固な基盤となることである。また,意味・用法が偏って現れるという問題を具体的に提起することである。 この辞典はコンピュータ上で作成している。昨年度,久保田淳『建礼門院右京大夫集 とはずがたり』(1999年,小学館,新編日本古典文学全集)の文脈付き用語一覧KWICを作成し,その各事例に意味・用法を記述することを開始した。意味・用法の枠は,概括的な水準を基本とすることとし,主として三角洋一・小町谷照彦『最新全訳古語辞典』(2005年,東京書籍)の記述による。 本年度は,文脈付き用語一覧KWICの各事例に意味・用法を記述することを進めた。取り挙げた事例は,昨年度は,特に系統を立てず,語種も和語・漢語,品詞も名詞・動詞・形容詞・副詞,頻度も最多から1まで,種種にわたり,その多様性のゆえに,用語・事例の全体的記述に進んでよいという感触を得ていた。本年度は,高頻度用語の事例の処理を中心にすることとして,頻度20以上の異なり約250語のおおかた,延べ語数すなわち全事例の約60%を処理した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで,用語ごとにその全事例の意味・用法を記述するという進めかたをしてきた。本年度は,その進めかたも続けるが,最終年度として決着させるために,記述の点検も行う。すなわち,全用語の全事例を本文の出現順に配列し,意味・用法の記述に前後の語句と整合性が保たれているかを確認する。その作業のうちで,低頻度用語など記述未着手の用語・事例を処理することとしたい。
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