研究概要 |
明治以降の文学作品には、日本の近代化を反映するを西洋化が、外来語に色濃く反映している。その外来語の原語・表記・語構成・意味分野が、どのように変化してきたか、その実態を調査し、明らかにすることを目的とする。そのため、明治・大正・昭和の時代から50作品を選定し、初版本あるいはそのコピーを入手して、外来語及びその語を含む用例文25,899を採集し、語別年代順索引(全5冊)を作成した。原語見出し・統一見出し・表記見出しを立項し、語種・語構成・原語つづり、刊年・作品名の情報を記入し、用例を列記した。そこから発見できた興味深い現象を考察した。そのうち、外来語が動詞化する現象を報告する。一つは、サボる,ダブる,のように「る」が付いて五段活用する語類で、バイオ(犯)る,エンビ(嫉妬)る(1904魔風恋風),ハイカる(1912発展),ダブる(1929蟹工船,1979大いなる助走),サボる(1928蟹工船,1936故旧忘れ得べき,1943海軍,1958点と線)の5語を発見できた。そしてサボるは「サボりだす」(1928蟹工船)のように複合動詞を造語するまでに一般化した。二つ目は「する」がついてサ行変格活用する語類で、66語が見つかった。ラーブする(1886雪中梅),プロポーズする(1890浮雲),キッスする(1900不如帰,1904魔風恋風,1917腕くらべ),ラブする(1904魔風恋風)にはじまる恋愛関係から、サービスする,スタートする,メモする,などへと発展していくのはおもしろい。原語の移入時期とその意味との関係など、外来語研究は今後が期待できる分野である。
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