研究概要 |
本研究の目的:右枝節点繰上げ構文(RNR)等の右方移動構文の理論的・実証的研究に基づき,句構造の非対称性・線形化と構造的依存関係のメカニズムを解明する。 本研究の具体的な内容及び研究成果:RNR構文には全域的RNR構文と対称的RNR構文が存在し,2種類の構造・派生過程・線形化のプロセスを有する構文であることを示した。 (1)RNR要素の生起位置及びRNR構文轍の派生過程:(i)RNR構文のin-situ分析:RNR要素は,一番右側の被接続要素内の元々の位置にある。(ii)RNR構文のex-situ分析:RNR要素は,すべての被接続要素に多重に支配されている。 (2)仮説(i)-(ii)を組み込んだ分析の妥当性:RNR構文が,(a)島の条件に従わない,(b)動詞句削除の先行詞としてRNR要素が含まれる,(c)前置詞句からの抜き出しが(一見したところ)許される,(d)適正束縛条件が課されない,(e)束縛条件(C)が課されるというRNR構文の諸特性は,RNR要素が移動されることなく元々の位置に生起していることを示唆し,仮説(i)の妥当性を示している。また,(f)RNR要素として対称的述語が生起する,(g)RNR要素として分離先行詞が生起するというRNR構文の諸特性は,RNR要素が多重に支配されていることを示唆し,仮説(ii)の妥当性を示している。 本研究の意義・重要性:従来のRNR構文の分析には,i)移動分析,ii)削除分析,iii)多重支配分析が提案されている。このような従来のRNR構文に対する分析とは異なり,本研究の独創的な点は,RNR構文を適切に分析するためにはRNR構文のin-situ分析とex-situ分析の両方を仮定しなければならないことを示したことにある。これは,異なる線形化のメカニズムが存在することを示唆している。
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