研究課題/領域番号 |
22520491
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
仁科 弘之 埼玉大学, 教養学部, 教授 (20125777)
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キーワード | 行為動詞 / モデル意味論 / 使役 / 運動計画 / 様相論理 / オートマトン論 |
研究概要 |
昨年秋にルール大学(ドイツ、ボッフム)で開催された「欧州意味論哲学会議第4回」にて研究発表を行った。この会議では、STIT(=see to it that)Logicの応用を発表する場であり、いわば、伝統的述語論理の適用を新たな観点で見直し、文主語の意志を意味記述する方法を討論する極めて進歩的で刺激的な会合であった。申請者は、そのなかの行為文セクションに応募して論文を受理された。身体動作記述に使役を用いているために、この方面で新たな発見があるかをさぐるためにこの会議に出席したが、幸いな事に申請者の研究内容への反例や、研究進路を大きく変更させる接近法は見いだせなかった。会議では肯定的な反応を得た。 申請者の当初の計画は以下のようであった: (1)関節間の運動使役を単位とする回転式の組み合わせで行為を記述し、えられた様相式をその行為の意味記述する。 (2)模型ロボットによる身体動作をこの様相論理表現で記述し、得られた表現の多様性を確認し、その妥当性を実験的に検証する。これを、新に有限オートマトンに表現と比較する。 (3)この外延的動詞意味論の存在基盤を、ミラー・ニューロンの機能に求め、動詞意味の運動論的な生成とその解釈モデル構築の基礎条件を探る。 現在、当初の3段階の計画のうち、第2段階半ばまで到達している。本年中に(2)の後半部の比較論において、一定の具体的成果をあげる計画である。さらに(3)の運動的解釈機構の構想に進む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は研究発表に間に合わなかった研究内容を、次年度に適切な国際学会で成果を発表することができた。伝統的述語論理学の再検討を行う学会において、申請者の接近法を伝統的手法で代替できるかを検討したが、やはり代替案はなく、申請者の手法の妥当さを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)二足歩行模型(KHR-3HV)を組み立てて使用する。動作をこの模型上で再現し、その運動計画のデータ収集を行う。(2)模型に模擬させた動作のなかから、適切な代表例を選択する。(3)各動作を実現するための運動計画のデータを回転関数で再計算することで、オートマトンが受理できる記号列に変換する。(4)えられた記号列を受理するオートマトンを発見する。プッシュダウンオートマトン(文脈自由文法を記述可能)か線形拘束オートマトン(文脈依存言語を記述可能)のいずれかによってこの記号列は受理可能であると予想される。
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