言語を生成する文法の起源には身体運動を司る運動プログラムが関与していることを立証するための予備研究を行った。人間の動作を単純化した『動作』から木構造表示を構成できる可能性を調べた。 これまで動作動詞の外延的な意味論構築のために、2,3の動作についてそれらの外延的意味を様相論理学を用いて表示する試みを行った。この研究において、様相論理式を評価するために回転式なるものを定義した。これは各関節とその回転から自己の回転に影響を被る関節との使役関係を示したものである。この回転式の結合関係を木表示することを可能にするアルゴリズムを考案した。 二足歩行ロボット模型には、いくつかの基本的な動作のための運動プログラムが予めインストールされている。これらの動作から腕立て伏せを例にとり、その運動計画から木表示に変換するアルゴリズムを考察した。ある種の句構造文法で生成できる木構造をもちいて、この動作を記述することができたが、動作の一サイクルを記述するに変形規則が必要であるかはまだ確定的でない。 9月中旬にリスボン大学科学哲学センター主催:From Grooming to Speaking「毛繕いから言葉へ」と銘打った霊長類のコミュニケーションの国際学会でこの成果を発表した。チンパンジーの手話から、ヒトの言語の背後にあるとチョムスキーの主張する普遍文法への言及まで多彩な研究発表が行われた。筆者は運動制御のためのmotion planningを記号連鎖に変換した「言語」とヒトの言語の複雑性をオートマトンによって比較した。身体の運動制御の記号論的体系が文法を生み出した可能性のあることを論じて相当の評価をえた。この議事録を元に論集が発行される予定である。
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