ゲルマン語とロマンス語全般につき、MP(数詞と度量衡の単位となる語から成る句)と述語形容詞の語順についての研究を論文にまとめた。イタリア語の方言においては若干問題の残るデータがあるが、形容詞の要求する数の一致とMP自体が持つ数の素性との関係で可能な語順が決定されるという提案は、一致の理論を検証するあらたな現象の発見として今後評価されるであろう。2011年中に国際学術誌Linguistic Inquiryに掲載されることが決定している。 また、これと関連し、MPをともなう日本語の形容詞の意味解釈について、英語のような言語では観察されない意味特徴が存在することを学会(2ページ目参照)で発表し、議事録に掲載される論文の他、それをさらに拡張したものもまとめた。後者の投稿先は現在未定である。MPをともなう場合、英語などでは、どの次元に関する度合いであるかを示すだけの役割しか形容詞が持たないのに対し、日本語では、「高さ20メートルある」のような場合、MPなしの形容詞が示す、一定の基準を超えているという意味が共存する。この事実の発見は、MPをともなう形容詞についての形式意味論における従来の扱いに変更を迫るものであり、議事録論文を拡張した論文では、この新事実の意味分析を統語分析と折り合いをつける形で定式化した。 人称については、大学院のセミナーで一通りの問題整理を行い、今後の研究の指針となるポイントを把握することができた。そのうち、アフリカのフラニ語の人称マーカーの形態については、人称と数の相互作用がうかがえる重要なデータとして分析できることが判明した。平成23年度中に論文にまとめることを計画している。
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