研究概要 |
日本語における可算・非可算の区別については、部分構文の語順の違いに見える意味解釈上の違いに着目し、分類詞がなくても複数の意味が独立のものとして得られることから、その前提となる可算名詞も同様にその存在が認められるべきことを立証した。「一部のリンゴ」が必ず複数のリンゴについてその一部を指すのに対し「リンゴの一部」といったときは全体が単複両方の場合を許す、というのが観察の中心である。 また、句構造形成の演算操作を任意の単一の語彙項目に繰り返し適用することで自然数列に対応可能な集合列を作り出すことができる、というチョムスキーの提案がある。それをやや修正し、1 = {LI}、2 = {LI, {LI}}、3 = {LI, {LI, {LI}}}のようにすることで、この統語構造を音韻化すると自然数の表記法に近づけることができるというアイデアは、本プロジェクト以前に発表したものであるが、今年度は、それを発展させた。この統語構造に前後関係を与え、省略表現の分析の場合と同じような音韻演算における構成素削除を適用することで、「1、2、3、4」というものを数えるときの数詞の列から「4」という数詞のみを切り出してくることが同様に可能になるという結果を得た。これにより、子供が数詞を習得するとき、「3」まではひとつひとつ時間がかかるのに対し、「3」まで達すると、数えるという行為の意味や「3」以降の数詞の意味も、段階を踏まず理解できるようになるという認知心理学でよく知られている事実が簡単に説明できるようになる。 以上の成果はいずれも、7月、ジュネーブで行われた国際言語学者会議において発表した。 この他、昨年度国際学術誌Natural Language and Linguistic Theoryに投稿していたカイオワ語とヘーメス語の逆数についての論文は、自動詞の形態分析改訂の後、受理された。
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