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2013 年度 実績報告書

統語演算における数の素性の役割

研究課題

研究課題/領域番号 22520492
研究機関東京大学

研究代表者

渡邉 明  東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (70265487)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2015-03-31
キーワード可算・非可算 / 自然数 / 数詞の習得
研究概要

日本語における可算・非可算の区別については、部分構文の語順の違いに見える意味解釈上の違いに着目し、分類詞がなくても複数の意味が独立のものとして得られることから、その前提となる可算名詞も同様にその存在が認められるべきことを立証した。「一部のリンゴ」が必ず複数のリンゴについてその一部を指すのに対し「リンゴの一部」といったときは全体が単複両方の場合を許す、というのが観察の中心である。
また、句構造形成の演算操作を任意の単一の語彙項目に繰り返し適用することで自然数列に対応可能な集合列を作り出すことができる、というチョムスキーの提案がある。それをやや修正し、1 = {LI}、2 = {LI, {LI}}、3 = {LI, {LI, {LI}}}のようにすることで、この統語構造を音韻化すると自然数の表記法に近づけることができるというアイデアは、本プロジェクト以前に発表したものであるが、今年度は、それを発展させた。この統語構造に前後関係を与え、省略表現の分析の場合と同じような音韻演算における構成素削除を適用することで、「1、2、3、4」というものを数えるときの数詞の列から「4」という数詞のみを切り出してくることが同様に可能になるという結果を得た。これにより、子供が数詞を習得するとき、「3」まではひとつひとつ時間がかかるのに対し、「3」まで達すると、数えるという行為の意味や「3」以降の数詞の意味も、段階を踏まず理解できるようになるという認知心理学でよく知られている事実が簡単に説明できるようになる。
以上の成果はいずれも、7月、ジュネーブで行われた国際言語学者会議において発表した。
この他、昨年度国際学術誌Natural Language and Linguistic Theoryに投稿していたカイオワ語とヘーメス語の逆数についての論文は、自動詞の形態分析改訂の後、受理された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

数をめぐる言語現象については、この4年間において、研究史上取り上げられたことのない現象にアプローチできるようになるなど、素性レベルを含め統語・形態の両面において様々な成果を得ることができている。人称との関わりについても、数の素性との組み合わせ上の論理が形態演算において役割を果たしていることを明らかにした。なかでも一致のメカニズムについてのあたらしい理論に到達したことは、当初予想もしていなかった地平が開けたものとして特筆に値する。
当初の目的のうちでは、associative pluralのみがめぼしい成果を上げていないが、日本語については意味解釈上の個人差がみられるかもしれないことがパイロット研究で判明し、これは別途の大規模な調査で個人差の実態を把握しないと前進できないものであるというのが現在の時点での判断である。

今後の研究の推進方策

平成25年度に学会で発表した成果を論文にまとめる。また、プロジェクト3年目に新たに提案した一致のメカニズムは、数の素性をもとに動機付けを行っていたが、最終年度は、人称素性に関し、その働き具合を検証する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Person-Number Interaction: Impoverishment and Natural Classes2013

    • 著者名/発表者名
      渡邉明
    • 雑誌名

      Linguistic Inquiry

      巻: 44 ページ: 469-492

    • DOI

      10.1162/ling_a_00135

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Non-Neutral Interpretation of Adjectives under Measure Phrase Modification2013

    • 著者名/発表者名
      渡邉明
    • 雑誌名

      Journal of East Asian Linguistics

      巻: 22 ページ: 261-301

    • DOI

      10.1007/s10831-013-9103-5

    • 査読あり
  • [学会発表] Count Syntax and the Partitivity

    • 著者名/発表者名
      渡邉明
    • 学会等名
      19th International Congress of Linguists
    • 発表場所
      ジュネーブ大学(スイス)
  • [学会発表] Mental Representation of Natural Numbers and Acquisition of Numerals

    • 著者名/発表者名
      渡邉明
    • 学会等名
      19th International Congress of Linguists
    • 発表場所
      ジュネーブ大学(スイス)
  • [学会発表] DPの内と外

    • 著者名/発表者名
      渡邉明
    • 学会等名
      日本英語学会第31回大会
    • 発表場所
      福岡大学(福岡県)

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公開日: 2015-05-28  

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