研究課題
本研究は、既製のコーパスの使用からオーダーメイドのコーパスを使用する言語研究へのシフトの可能性を示すことを目的としている。平成22年度においては、ICAMET (Innsbruck Computer Archive of Machine-Readable English Texts)のように、既製のコーパスの中でもジャンルなどの枠組みが比較的緩く、コーパスの中から自由にテキストを選び取ることが可能なものを選んで、否定構文の発達や、副詞の-ly語尾の発達などを調査した。また一方で、すでに存在するデータベースを利用しながら、研究目的に合わせて自由にコーパスを構築する試みにも着手した。Early English Books Onlineは、初期近代英語期のテキストをそのままの形で提供している貴重なデータベースであり、この中から、16世紀前半、16世紀後半、17世紀前半、17世紀後半の4つの時代区分でほぼ同量の語彙数からなるテキストの組み合わせを作成する作業を行い、パイロットスタディを行う準備を整えることができた。次頁の業績表にある雑誌論文"Early Modern English Prose Selections : Directions in Historical Corpus Linguistics"は、その作成の方法をまとめた論文である。また小さなパイロットスタディとして、動詞forbidのcomplementationの研究を行い、このようなコーパスの構築の方法が有効である可能性を示した。Forbidは、中英語期までは自由にthat節を従えていたものの、初期近代英語期以降は、急速にこの構文が衰退して、to不定詞の構文が増加することが知られている。今回Early English Books Onlineを利用して個人の研究目的のために構築したコーパス、EMEPS (Early Modern English Prose Selections)においてもこれを裏付ける結果を得ることができたことから、このようなオーダーメイドのコーパスの利用価値が高いことを確認できた。ただし、これは研究の一事例に過ぎないので、今後、さらなるパイロットスタディを重ねていくことが必要であろう。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件)
京都大学文学部研究紀要(Memoirs of the Faculty of Letters, Kyoto University)
巻: 50 ページ: 133-199
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/139204/1/lit50_133.pdf