研究概要 |
本研究は,「後期近代英語の散文における語彙多様化の一因は,Samuel Richaldson(1689-1761)にある」という仮説を,特に「語形成」の観点から検証することを主たる目的とするものである。三年の研究期間の初年度である平成22年度には,Richardsonの最初の書簡体小説であるPamela(1740)と長編の大作Clarissa(1747-48)を資料として,その語彙の特徴を分析していった。 Richardsonの作品には,二つの対立的要素が並置されていることが多々あるが,まず,Pamelaに見られる「男女」に関する基本釣な対語について(e.g."mankind"vs."womankind,""gentleman"vs."gentlewoman"),その用法や意味のバリエーションを,OED(Oxford English Dictionary)を参照して吟味・考察した。その考察の成果の一つが,『岡山大学大学院教育学研究科研究集録』(第144号)において発行した「RichardsonのPomelaにおける性差に基づく対語について」という論考である。他にも,chadwyck-Healeyの"Early English Prose Fiction Full-Text Database,""Eighteenth-Century Fiction Full-Text Database"から得たデータの一部を整備していった。とりわけ,小説黎明期(17世紀末から18世紀前半にかけて)の散文の電子テキストを中心に行ったが,それは,次年度以降,Richardsonの小説と比較・考察することを想定してのことである。
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