研究概要 |
本研究は,後期近代英語期における語彙多様化の一因を,この時代を代表する作家Samuel Richardson(1689-1761)に見出し,特に「語形成」の観点から,Richardsonの3つの書簡体小説(Pamela(1740),Clarissa(1747-48),Sir Charles Grandison(1753-54))を調査・分析するものである。 三年間の研究期間のうち二年目にあたる平成23年度には,所属学会である近代英語協会の第28回大会シンポジウムにおいて,司会兼講師として口頭発表を行った。「文学作品に見られる否定表現の通時的考察-社会的・心理的視点からのアプローチ-」と題するこのシンポジウムでは,否定表現を使用することでどのような文体的効果が生まれるのか,近代英語初期から後期にかけての否定表現の諸相を,三人の講師により通時的に考察していったが,自分の担当では,Richardsonの作品に見られる"disagreeable,""implacable,""in-/ungrateful,""unworthy,""hopeless,""non-compliance"など本研究のテーマである語形成の面から分析した。分析の結果,この否定接辞を含む語の中には,Oxford English Dictionaryの初例となっているような独特な意味・用法もあれば,複数の同義語が畳みかけるように繰り返されたり,その逆に相反する内容の語が一括りになるなど,その使い方が多種多様であることが分かった。 上記の口頭発表の内容についてさらに考察を深め,その一部を論文の形にまとめ,岡山英文学会の学会誌や所属研究機関の紀要に掲載した。
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