研究概要 |
「語形成から分析する後期近代英語:小説黎明期に見る女性の文体を中心として」を研究課題とする本研究では,Samuel Richardsonを境に, その前後に書かれた散文に(特に女性作家において)どのような変化が見られるのか,「接辞」や「合成語」,「品詞転換」など語形成の観点からの調査を通じて検証することを狙いとしたものである。 初年度である平成22年度には,Richardsonの最初の書簡体小説Pamela (1740)や長編の大作Clarissa (1747-48) を資料に,語の意味や構造の特徴を分析し,二年目にあたる平成23年度には,所属学会である近代英語協会の第28回大会におけるシンポジウムにおいて,司会兼講師として発表したことが主な研究成果へと繋がった。このような経緯を踏まえ,最終年度にあたる平成24年度には,学会誌や所属部局の研究集録に論文を発表すると共に,これまでの調査・研究の総まとめをすることに集中した。 具体的には,Richardson の作品を資料に,否定語による合成語を広範囲で調査したり,性別・身分など社会的要因による言葉の差異について,コーパスを活用しながら分析するなど多面的な考察を試みた。これらの調査・分析により,Richardson 自身が造り出した合成語には,対照を成す表現が多いことや,二重否定に特徴が表れているということ,また,Richardsonの社会的意識の高さが,その言葉の使用に反映していること等を指摘するに至った。
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