研究課題/領域番号 |
22520500
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岩部 浩三 山口大学, 人文学部, 教授 (90176561)
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キーワード | 総称文 / 数量化 / 法助動詞 |
研究概要 |
Rimell(2004)によれば、(1)に見られる無標の習慣性はusuallyのような数量化副詞による習慣性とは異なると言う。usuallyを伴う(2)ではabeerを目的語に敢れるのに、副詞を伴わない(3)では不可能だからである。本研究は、数量化という視点から総称・習慣文の統一的な分析を目指しているので、(1)と(2)との間に根源的な違いを認めるような立場とは相容れない。 (1)Mary drink sbeer. (2)Mary usually drinks a beer. (3)#Mary drinks a beer. Rime11は(1)と(3)の両方に無標の数量詞GENが含まれているとの前提に立ち、(2)と(3)では容認可能性に差があるため、GENとusuallyでは数量化の性質が異なるという結論に導かれている。 私は、(3)にはGENは含まれていないと考える。さらに言うなら、GENという数量詞は他の数量的な要素に依存したものであって、独立して存在するものではないと主張したい。(1)が習慣を表すのは、物質名詞beerが無尽蔵のビールを表し、何度も飲むことができるからである。(3)のabeerは一杯のビールであって、繰り返し飲むという解釈は不自然である。(2)が可能であるのはusuallyが独立した数量詞であって、その作用域内にあるa beerを飲んギ回数分だけ導入することが出来るからである。 総称性に関する(4)と(5)の違いは「4本脚であることの必然性」の有無である。必然性があることによって、どの犬も4本脚であることが保証される。 (4)A dog has four legs. (5)#A table has four legs. ここで両方にGENを仮定すると区別ができなくなる。単純現在時制の文すべてが習慣性や総称性を持つのではなく1そのような数量化を保証するものが別に必要なのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画として、Condravaiの指摘する「総称的でもなく、存在的でもない無冠詞複数形の第3の読み」の解明とRime11の「習慣文と総称的数量化の違い」の分析の2点を挙げていた。本研究について直接的な影響力を持つのは後者であり、それについては研究実績の概要での述べたとおり、十分な見通しが得られた。前者については解明が十分とは言えないが、本研究との関連性は間接的であり、大きな影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
総称文や習慣文を数量化という視点から捉え直し、mustなどの法助動詞の数量化分析と統合するという研究目標に対して、「習慣文は、通常の数量化の構造を持たない」とするRime11の指摘はもっとも困難な課題となることが予測されたが、それを克服する見通しができたことで、数量化の統一的な分析を目指した研究の方向性の正しさを確認した。平成24年度は、学会発表あるいは論文執筆によって研究成果を発表する予定である。
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