研究課題/領域番号 |
22520501
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
赤羽 仁志 山口大学, 人文学部, 准教授 (60320107)
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キーワード | 脱焦点化 / 接語重複 / スクランブリング / フェイズ理論 |
研究概要 |
本研究は、言語によって異なる脱焦点化の現象を比較しながら、共通して関与すると思われる統語的メカニズムをいわゆる極小主義プログラムの枠組みにより解明することを目的とする。平成23年度は、特にバルカンの言語に観察される「接語重複」を取り上げ、脱焦点化について考察した。当該の接語重複では、通常、焦点要素が占める文末位置を非焦点要素が占める。これは、焦点位置を明け渡すように移動が起こる焦点化現象としてのスクランブリングとは対照的であり、一見、奇妙である。しかし、Sportiche(1996)等が論じるように接語重複にも移動が関与するとした場合、接語の位置が移動先に当たり、この位置に注目すると、接語重複とスクランブリングとの間に一定の共通性が認められる。特に、脱焦点化のための移動先が、文の周縁部でなく、いわゆる中間領域であるという点が注目される。これは一体なぜか。そのような問題について、Chomsky(2000)以降のフェイズ理論を採用し、統語的説明を試みた。フェイズ理論によれば、vPフェイズ極辺に位置することにより、CPフェイズ主要部からの探査が可能である(フェイズ不可侵性条件)。この仮定に基づき、接語重複においては文末に基底生成する目的語がvPフェイズ極辺へ移動することにより、CPフェイズ主要部から[-Foc(us)]の素性値を受け、脱焦点化が為されると論じた。このような分析をすることで、スクランブリングとも統一的な説明が可能となる。更に、言語によっては接語重複が必ずしも脱焦点化の効果を持たない場合があるが、これについてはパラメタによる説明を提案した。また、接語重複が関係しないと思われる言語においても類似の現象が部分的に観察されることを指摘した。具体的には、英語の叙実補文に一種の接語重複が関与しているのではないかと分析している。以上の内容は、論文として平成24年3月、山口大学の学内紀要『異文化研究』6巻に刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査や資料収集のため、時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
更に必要な資料の収集を行いながら調査・研究を継続していく。できるだけ研究会・学会等の機会を利用して情報収集及び研究成果の発表を行う。取り分け、海外の学会には積極的に参加していきたい。また、研究成果を年度中に学会機関紙あるいは学内紀要に発表するようにしたい。
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