生成文法の言語機能の特性の解明のためには、文法のインターフェイスの研究が必須である。また、言語の多様性、可変可能性も言語機能の備えた重要な特性であることから、通言語的調査や言語内の関連構文の詳細な調査も不可欠である。 稲田、今西、西岡は、いずれも焦点化に関わる事象について省略、文断片、否定、WH-構文、照応を中心にインターフェイスの満たすべき特性を検討した。同時に、生成文法の標準的アプローチの問題点を洗い出し、新しい言語機能モデルを探索するため、構造-意味、構造-音韻のインターフェイスと談話や言語運用に関わる問題を研究した。 稲田は、特に言語運用上の要請が文法にどのように影響するかについて、疑問文の簡略応答として使われる文断片を中心に研究し、その成果を論文として公表した。また、インターフェイスモデルとして、統語・意味並列構成によるアプローチが妥当であることを示すため、異なる範疇の等位接続に関する問題について独自の提案をし、福岡言語学会40周年記念大会において公表した。その中で、統語範疇の決定に関わる問題に関して、Chomsky (2013)で示唆された案が妥当ではないことを明らかにした。 西岡、今西もそれぞれ、焦点化が関わる否定、照応、削除の問題とインターフェイスの関係について、また、照応や削除に関する通言語的調査を行い、論文や学会で公表した。特に、西岡は、熊本方言の詳細な調査により、否定のスコープと統語構造に関する競合する仮説を検証して、新しい提案を行い国際学会で発表した。 研究成果については、協力研究者による関連研究と一緒に収録して報告書にまとめて、公表した。
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