3か年の研究の最終年度にあたる本年は、『速記・言語科学研究会活動報告書 2010.4-2013.3』を作成し、これまで本課題について研究を進め口頭発表してきた速記・言語科学研究会の活動内容を記録し、公刊した。速記・言語科学研究会では、音声言語と書記言語をつなぐテクノロジーの文化的、社会的、および技術的研究に取り組んできた。そのなかで、研究代表者は英語の綴り字改革運動を、音声言語と書記言語の関係を見直す試みとして、速記(特に表音式速記)と密接に結び付いたものととらえ、そのうえで文化・社会史的に位置づける試みを行ってきた。報告書は、研究会の活動の概要を記し、また個別テーマについての論考を収録した。研究代表者は、論文The Philological Society’s Partial Corections of English Spellingsで、英国言語学会の1870-80年代の綴り字改革運動について論じた。 このほか、研究代表者はシンガポールで、世界諸英語のひとつとしてのシンガポール英語、およびシンガポールにおける英文速記利用について、シンガポール国立図書館およびシンガポール国会議事堂で調査を行った。この調査については2012年9月2日に名古屋市公会堂で開催された速記・言語科学研究会で「シンガポール議会の記録」として発表した。 また、イギリスの綴り字改革論者バーナード・ショーの研究者との意見交換、研究成果発表の機会として、6月2日に、京都府立大学で、日本バーナード・ショー協会2012年度春季大会を開催した。さらに、ロンドン大学音声学夏季セミナー担当の音声学者ジェフ・リンジー氏を京都府立大学に招き、英語音声学の講演会を開催した。 なお、研究成果の一部は2013年4月刊行の『世界の英語を映画で学ぶ』(山口美知代編著、松柏社)として発表される。
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