研究課題/領域番号 |
22520504
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
岩田 彩志 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50232682)
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キーワード | 項構造 / 語彙意味論 / 構文理論 / 結果構文 / 語彙・構文論的アプローチ |
研究概要 |
一年目の研究から、He laughed his head offのような自動詞に基づく結果表現はHe wiped the table cleanのような他動詞に基づく結果表現と異なり、目的語位置に生じる物体がforce-recipientになっていないことが判明した。しかし、ではどのように動詞の表わす事象と結果状態が関連しているかを調べていった結果、思いがけないことが分かってきた。 1.He laughed his head offにおいて、大笑いするとheadが揺れるためにhis head offという結果状態が引き起こされると捉えている。つまりbody-internal motionにより結果状態が引き起こされていることになる。ここまでは一年目の研究からもある程度予測出来る範囲であった。 2.ところがHe wondered his head offやHe shouted his head offのように、厳密にはこの説明をそのままあてはめられない実例が多数見つかった。これらの例は、「頭を激しく動かす」→「頭を使う」、「頭を激しく動かす」→「大声を出す」のような語用論的知識に基づく拡張用法であると考えられる。そしてV one' s head offという結果表現は、語彙項目と同じように多義ネットワークを成していることになる。 3.他の身体部位に関する結果表現(V one' s eyes out/V one' s hear tout/Vone' s socks off)を調べてみると、やはり語彙ネットワークを成していることが判明した。 これはつまり、結果表現も語彙項目と同じように長期記憶に蓄えられていることを意味する。使用依拠(usage-based)モデルの考え方を突きすすめれば、これは寧ろ当然のことであり、語彙・構文論的アプローチの妥当性を裏付けてくれる。しかしGoldbergをはじめとして、多くの学者が使用依拠(usage-based)モデルの見方を採用していると言いながらも、この事実とは相いれない主張をしてきている。この発見は、従来の結果表現に対する見方に根本的な修正を迫るものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の結果表現に対する見方に根本的な修正を迫るような発見があった。語彙・構文論的アプローチの根本的な考え方を支持する発見であることから、その方向性が正しいことが確認出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえて、さらに他のタイプの結果表現にも、これまでに明らかになったことが当てはまるかどうかを検証していきたい。
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