研究概要 |
発話の中で最も強いアクセントが付与され,イントネーションの中心となる音調核を持つ語が,対比フォーカス(CF)や新情報(NI)などの「狭いフォーカス」となる22種類の英文と短いパセッジを分析対象に,日本人学習者(JS)の英語プロソディの特徴について,英語話者5人による音声評価と音響分析の結果を基に調べた。上記の文をJSが自由に読み上げた音声(UP)と指定された音調核の位置と音調に従って読み上げた音声(CP)のイントネーションの明瞭度(5が最良の5段階評価)は,核音調が下降上昇調の文はCP,UPともに低かった(平均:3.01,全体平均:3.19)。核音調が提示されても日本人にとって発音しにくく(UPでほとんどのJSが下降調を使用),文脈に応じた使用が難しい音調であることが示唆された。 音調核が正しい位置に認識される率はCPの方が高く,核の位置を示すことで改善された。否定辞を含む助動詞を持つ文ではほとんどのJSが間違えて助動詞に音調核を置いた。また,英語話者の発音(NS)の発音では音調核の持続時間がNIよりCFの方が長いなどの音響的相違が見られたが,日本人の発音では見られなかった。明瞭度の高いJSは,NSと同様にピッチとインテンシティの音調核以降の急激な下降があるが,低明瞭度の発音では見られなかった。また,核音調が上昇調の30文のUPと30文のCPを分析した結果,音調核が文末にある方が,文頭や文中にある場合よりも,UP,CP共にイントネーションの明瞭度が高くなったこと,文頭に音調核があるとUPとCPで明瞭度の違いがはっきり出たこと(2.8対3.3),英語母語話者は日本人学習者よりもピッチの変動幅が大きいこと,日本人学習者は代名詞を強く発音することで英語のリズムを崩す傾向があること,学習者が音調核を際立たせるためにはピッチと音調核の持続時間を効果的に使用する必要があることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に行った音声評価実験結果と音声資料をさらに分析していくとともに,平成24年度には,発話の区切りに焦点をあて,日本語話者が異なる文法構造を持つ英文をどのように区切りながら発音するか,また,区切りにおいてどのような音調を使用するかといったことを中心に調べる予定である。 日本人の英語の音声評価者となる英語話者は5人程度を予定しているが,諸事情で人数が確保できない場合は,確保できた人数で評価実験を行うこととする。
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