研究概要 |
形態統語構造から音韻構造への写像における枝分かれ構造の非対称性を提案し、強勢位置が、形態から統語、談話までの各構成素の線的順序を決定するという仮説を提示する。そしてこの非対称性と順序決定の仮説を、英語及び世界の諸言語について、共時的・通時的に実証し、音韻論・形態論・統語論・談話構造・類型論・歴史言語学・言語習得にわたる主要部と補部の語順の現象を統一的に説明する。補部の指定辞位置への移動は、その結果生じる複合語的構成素の強勢位置が、その言語の無標の語強勢位置と同じ場合のみ許されるという仮説をデータで検証し、語強勢位置から各主要部パラメタの値を導くことで、主要部パラメタ自体は不要であることを示す。 A. 基本的文献の収集と整理 研究に必要となる基本的文献として、理論研究書と言語の記述文法書を収集し、整理する。理論研究としては、生成文法を中心とする形態論・統語論の研究書・博士論文を、記述文法書としては、まずThe World Atlas of Language Structures (Online版も)に記載されている参考文献を収集する。記述文法書は、出版年が古いものが多いため、一般書店はもとより海外のネット古書店に広く発注する。また絶版本・品切れ本については、国内では図書館相互貸借利用によって借り受け、関係部分を複写し、製本・ファイリングなどの整理を行う。国内に所在がない場合は、調査の上、該当する国外大学図書館などに資料収集に行く。 B. 理論基盤の研究 理論基盤については、これまでの考察を論文にまとめながら、さらに歴史言語学、言語獲得などに適用するよう各分野の基本的な理論を習得することに努める。統語論においては、イギリスのケンブリッジ大学(l. Roberts, T. Biberauer)とニューキャッスル大学(A. Holmberg, M. Sheehan)を中心に行われている「線形化の原理」プロジェクトに引き続き参加しながら、先端の理論に貢献することを目指す。
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