形態統語構造から音韻構造への写像における枝分かれ構造の非対称性を提案し、強勢位置が、形態から統語、談話までの各構成素の線的順序を決定するという仮説を提示する。そしてこの非対称性と順序決定の仮説を、英語及び世界の諸言語について、共時的・通時的に実証し、音韻論・形態論・統語論・談話構造・類型論・歴史言語学・言語習得にわたる主要部と補部の語順の現象を統一的に説明する。補部の指定辞位置への移動は、その結果生じる複合語的構成素の強勢位置が、その言語の無標の語強勢位置と同じ場合のみ許されるという仮説をデータで検証し、語強勢位置から各主要部パラメタの値を導くことで、主要部パラメタ自体は不要であることを示す。 本年度(平成23年4月1日~平成24年3月31日)は、一昨年、昨年の研究成果を論文として完成させ、学術雑誌に投稿し、一部は年度申に出版された。その細目は次である。 ・相関関係の統計的分析 ・強勢データの拡充 ・データベース言語名の修正 ・諸言語の文献調査 年度全体では、言語の地理的な変異が狭い範囲でも広い範囲でも共通に起こることを論じた。研究成果は、国内外の学会で発表し、そのフィードバックを生かした研究を進めた。主な学会発表は、以下のとおりである。 ・5月 Phonology in the 21st century (モントリオール) 5月 ・8月 Variation and Typology (ヘルシンキ) 8月 ・11月 日本英語学会シンポジウム(新潟大学、責任者・司会・講師) ・3月 Formal Linguistics and the Measurement of Grammatical Complexity. University of Washington その結果は会議録、論文集単行本、学術雑誌などに論文の形で公表する予定である。
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