研究課題/領域番号 |
22520507
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
時崎 久夫 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (20211394)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 複合語 / 強勢 / パラメタ― / 類型論 / 言語習得 |
研究概要 |
世界の言語には、英語のように複合語を生産的に作れる言語と、スペイン語のように作れない言語があるが、その違いは、単語の強勢位置の違いによるという仮説をたてて検証した。語の左側に強勢を持つゲルマン系の言語(ドイツ語など)は、複合語を生産的に作れるが、語の右側に強勢を持つロマンス系の言語(スペイン語など)は、複合語を生産的に作れない。これは、複合語においても、語の強勢位置が反映されて、同じ位置に強勢を持とうとするためであると考えられる。また、語の結合度は、右側に主要部がくる左枝分かれの構造の方が、左側に主要部がくる右枝分かれの構造より強いと考えられる。よって、緊密な複合語を作るためには補部(修飾部)―主要部の語順にする必要がある。さらに、強勢は主要部よりも補部(修飾部)に置かれるという原則がある。すると、補部(修飾部)―主要部の語順で複合語を作ると、強勢はその左側に置かれる。これは左側に強勢を持つ言語には適するが、右側に強勢を持つ言語には適さない。よって、複合語の生産性と繰り返しに差が出てくると考えられる。 この研究により、これまで複合語パラメター (The Compounding Parameter) として設定されてきた世界の言語の形態論的な違いを、強勢位置の違いという音韻的な性質から導き出すことが出来る。とすれば、複合語パラメターは必要なくなり、パラメターを音韻論に限定することができる。必要なパラメターを最低限に制限することができれば、子供の言語習得にも納得のいく説明を与えることが出来る。これが他の統語形態論の分野にも拡大できるという見通しで、さらに研究を続けたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果を論文として公刊することができた。
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今後の研究の推進方策 |
音韻論にパラメターを限定するという方策を、複合語以外の形態統語論分野に拡大していく。
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