本年度は、言語習得過程の中でかなり早い時期に現れ、かつ様々な用法を持つ英語の基本動詞であるgetを取り上げ、その意味・概念に着目し、従来通時的観点からとらえてきた語彙を通時的観点だけではなく、言語理論・言語習得・認知の観点からとらえることを目指した。まず、Oxford English Dictionaryの中で例文として記載されているgetを用いた文を抽出し、当該動詞の後に来るカテゴリーに基づいて分類し、それぞれの生じた時期を調査した。さらにOEDおよび先行研究の中で記述されているgetのさまざまな用法の生起時期と合致しているかを調べた。また認知言語学では英語の基本的動詞に対してどのようなスキーマを設定して説明しているかを調べた。特にgetの基本形のひとつと考えられるget+形容詞の生起時期に関する従来の説明が妥当であるか、またその意味構造はスキーマを利用した表示ではどのようになり、これが言語習得過程でのgetの生起時期およびその意味構造の発達と同じ経路をたどるのかどうかを調べた。結果、OED・先行研究で示されたそれぞれの形式の初期の生起順序は文献ではより早い段階で生じていることが確認された。また他言語の翻訳から生じる構造の影響は若干あるものの言語習得過程でgetが習得されていく形式の生起順序と非常に類似しているということを確認した。この生起順序は意味領域(Domain)の拡張という概念および人間の発達にかかわる概念拡張などが影響を与えている可能性が高くなった。当該構文がその中心となる動詞の意味概念構造の拡張によって生じることの検証結果は現在学術論文誌への投稿準備中である。
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