本研究の目的は、現在では知ることのできない近代英語期の口語表現の特徴を、複数のコーパスを比較しながら、歴史語用論的視点から質的・量的分析によって探ることにある。主として扱うコーパスは、研究代表者の椎名自身が編纂に関わった『イングリッシュ・ダイアローグ1560-1760』と『ヘルシンキ・コーパス』である。これらのコーパスに収められた様々なジャンルのテキストにおけるディスコース・マーカーに注目し、その形態と語用論的機能をコーパス横断的に調査し、データ間の類似点と相違点を通時的・共時的に探ることによって、近代英語期の口語表現の全体像を捉え、これまで長く行ってきた近代英語期の口語表現の研究を総括することを目指している。 本年度は、個人的に研究を進めると同時に、これまで国内外の言語関連の学会等で出会った英語以外の言語(日本語、韓国語、ドイツ語等)の歴史語用論研究者で組織した歴史語用論研究グループにおいて、研究発表会やワークショップを行ない、これまでの研究のまとめと、それに対するフィードバックを行った。また、国内外の研究者と共に、歴史語用論の入門書を出版することになり、その執筆、編集作業を行った。歴史語用論研究の成り立ちや背景、アプローチ、分析データ等についてのイントロダクションと、『イングリッシュ・ダイアローグ1560-1760』のなかの裁判記録において、「呪い」のスピーチ・アクトに関連する3つの動詞に注目した論文を執筆した。
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