本研究の目的は、英語のさまざまな音韻・形態現象の説明に有用な音節量の計算において、従来あまり扱われてこなかった頭子音の有無・種類、および尾子音の種類が果たす役割を明らかにし、音節量と音節構造、フット構造との関係を再考することである。また、比較のために日本語の音節量、特に今まで全く触れられてこなかったその onset-sensitive な性質についても検討する。 具体的手法としては、英語については収録語数の多さ、処理しやすいテキストデータへの変換可能性などから Oxford English Dictionary (1989) のCD-ROM版 ver. 1.0に基づくデータベースと、機能は限定されるが使用頻度の高い語彙のみを収録していると考えられる Cambridge Dictionary of American English (2000) 付属のCD-ROMに基づくデータベースを、また日本語については品詞、形態情報等は含まれていないが各見出し語に品詞、形態情報、語種等から分類された「アクセント習得法則」の番号が付されている『新明解日本語アクセント辞典』(三省堂、2001)に基づくデータベースをそれぞれ構築、整備してデータを分析する。 今年度は、主に上記 Cambridge Dictionary of American English (2000) に基づくデータベースを活用し、種々のアクセント型を持つ語における(1)強勢音節と無強勢音節の頭子音、尾子音の分布の比較、(2)無強勢音節の頭子音、尾子音、音節核と強勢音節からの距離の関係について調査、分析を行った。さらに Webster's Ninth New Collegiate Dictionary (1990) を用いてアメリカ英語の語末無強勢開音節における後母音の弱化について調査し、データベースに組み入れた。
|