研究概要 |
22年度は,パブリックスピーキングの一ジャンルと思われるビジネス(式辞)スピーチの分析と,それに並行して,現在日本で刊行されている外国人日本語学習者向けの日本語教科書における口頭コミュニケーションの扱われ方に関する調査分析を行った。 この結果,以下のようなことが明らかになった。 まず,ビジネス(式辞)スピーチの全体的な構造について,実際の日本語母語話者によるスピーチの録音データを用いて,ジャンル分析の手法で分析を行った。それによると,「導入」「結び」部と「主題」部では,頻出するムーブの種類が異なること,「導入」「結び」部にはジャンルの決め手となる定型表現が多く観察されたが,「主題」部にはあまりなく,それがスピーチの個性や独創性を形作ることにもつながっていることがわかった。 また,日本語教科書の分析からは,口頭発表能力の指導として,アカデミック場面での口頭発表指導を取り上げている教科書が多く,ビジネス場面や生活場面での踏み込んだ内容での口頭発表についてはほとんど扱われていないということがわかった。 23年度には,22年度中に少し開始したパブリックスピーキングに関するニーズ調査について,引き続き調査を続ける予定である。そして,この調査で明らかになったパブリックスピーキングに関する言語行動の中から,ジャンルを選定し,そのジャンル内の発話を録音録画して,22年度と同様,ジャンル分析の手法で,特徴を明らかにすることにしている。 上記と並行して,外国で出版されている日本語教科書の調査も行いたい。
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