本研究は,グローバル化する日本社会で活動する外国人日本語使用者に必要な,日本語によるパブリックスピーキングの能力養成を目指した基礎研究である。 2012年度は,まず,外国人日本語使用者の日本語パブリックスピーキングに対するニーズを探るために,インタビュー調査を行ってきたが,その内容をまとめた。その結果,実際に日本語を使用して勤務している外国人日本語話者のニーズは,日本語教育関係者が目指すものと,ズレがあることがわかった。また,海外の日本語教育の場では,日本国内ではそれほど重視されていない「スピーチコンテスト」におけるスピーチ指導が重要な機能を持っていることも明らかになった。コンテストにおけるスピーチは,式辞スピーチなどとはまた別のジャンルであると考えられ,日本語教育におけるスピーチ指導にとって,何を重視するかが難しい問題であることが示唆された。 これまで続けてきた,式辞スピーチの構成の調査について,スピーチ全体の構成とその特徴を最終的にまとめた。またさらに,アカデミックプレゼンテーションとの違いについて,「聴衆への働きかけ」の方法に焦点を当てて探った。その結果,式辞スピーチとアカデミックプレゼンテーションは,どちらも,パブリックスピーキングとして,聴衆を重視するという特徴は共通であるが,聴衆を重視するための具体的な方策や使用頻度には違いがあることがわかり,それが同時にジャンルの異なりを表していることが明らかになった。
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