本年度は、1)新口頭能力評価システムの構築、2)実験協力者による評価実験の実施、3)評価実験結果の分析および分析結果の検討、4)評価者要因をモデルに組み込んだ多相ラッシュ・モデルによる分析結果との比較検討、という順序で日本語口頭能力評価システムの開発を進めることを計画していた。具体的には、i)レベルの異なる日本語学習者の協力を得て、課題に対する発話標本を収集し、ii)その中から日本語学習者の各レベルで典型的な発話標本を選び出し、iii)それらの発話標本をWEBで配信して、評価協力者に本研究で開発中の評価システムを使って発話標本毎に日本語口頭発話能力を評価してもらい、iv)評定結果を得点化し、それをもとにii)で想定した評価が再現されるか否かを通して、口頭能力評価システムの性能を検討した。 i)に関しては昨年度にパイロット・スタディを実施し、その結果を踏まえて「学習者にとって必要な情報を聞きだす能力」を測定する課題を導入した(庄司・安高・和田・野口)が、これに対して、課題の真正性および期待される応答が得られたかについて検討を実施した(安高・堀川)。さらにこれを受けて口頭能力試験で測定する構成概念の定義について理論的な側面から再検討して整理した(堀川・小林)。また、この口頭能力測定システムに対する受験者からの評価を、試験後に実施した受験者インタビューを基に分析した(野原・小林)。ii)に関しては、中級から上級の学習者12名の発話標本を選び出した。iii)に関しては、評価尺度について一部再検討した結果(小林・安高・野原)を踏まえて、最終的な評価システムを開発し、全部で53名の日本語教育専門家の協力を得て、実際の評価結果をデータとして得た。iv)に関しては現在データの基本分析を実施し、その結果を検討するとともに、多相ラッシュ・モデルの適用可能性について検討し、分析が可能であることが確認されている。
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