研究概要 |
琉球大学では「アジア人財資金構想(以下,アジア人財とする)」の中の「高度実践留学生育成事業」を沖縄コンソーシアム管理法人として実施していたが,本事業は2010年度をもって終了し,現在,各コンソーシアムの自立化が推進されている。そのため,アジア人財の目的であった「ビジネスに対応した高度な日本語力」を持つ「企業の発展および国際化に貢献しうる」人材を育成するための評価システムの確立が求められている。本研究では,外国人のビジネス日本語能力の評価システムとしてのビジネス日本語Can-do statements(以下,ビジネス日本語Cdsとする)を開発し,その信頼性と妥当性を検証しており,最終的にはビジネス日本語Cdsの完成を目指している。 アジア人財では,ビジネス日本語の能力を評価・測定する大規模試験「BJTビジネス日本語能力テスト(以下,BJTとする)」を習得度に関する外在化評価ツールとして採用していた。そこで,本研究では,BJTの評価・測定の基本的な考え方を参考に,ビジネス日本語Cdsの質問項目として再構築した。このビジネス日本語Cdsを用いて、2010年8月から2011年11月にかけ,沖縄県,東京都,愛知県の大学および日本語学校のビジネス日本語を学習者446名(うち平成23年度の調査対象は283名)に対して,BJT模擬テメトとビジネスCdsによる調査を実施し,その相関を求めた。その結果を基にビジネス日本語Cds修正版を完成した。 今後は国内調査と平行して海外在住のビジネス日本語学習者に調査を実施する。外国人学習者及びビジネスパーソンの自己評価に影響を与えるファクターは様々考えられるが、そのうち、「母語」「居住地域」の2点に絞り,それぞれの切り口で自己評価に差異があるかどうかを、DIF (Differential Item Functioning)分析によって明らかにし,ビジネス日本語Cdsの各項目の妥当性のさらなる検証をし,最終的には完成版ビジネス日本語Can-doを作成する。完成したビジネス日本語Cdsは,日本企業への就職を希望する日本語学習者に対するビジネス日本語教育の実践や,日本企業で働くビジネスパーソンの人事評価に資すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2010年度から2011年度にかけ,ビジネス日本語学習者のべ446名に対して,BJT模擬テストとビジネスCdsによる調査を実施した、うち2011年度の調査対象者は283名であった。これは当初の研究計画で想定したデータ数を上回っており、十分なデータを得られたといえる。また,調査の結果,当該ビジネス日本語Cdsの内部一貫性は高く,20項目中15項目で各技能とBJT模擬テストの得点との間に正の相関関係が認められたため、正の相関が見られなかった5項目を除外し、当初の計画通り第3次修正版ビジネス日本語Can-do statementsを完成した。
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