今年度は最終年であり、母語保持・継承のための学習支援体制の一助として、実践的に活用されることを目的としたウェブサイトの構築に重点を置いて、研究を進めた。母語教室で教育を担当している母語教師(ポルトガル語、スペイン語、コリア語、ベトナム語)から、直接、聞き取り調査を行い、教室の運営、教材の工夫、教授法の工夫、言語習得以外の活動や行事などについて、具体的な現場の取り組みの方策などの集大成を行った。短時間でどのような効果を目指すかについては、それぞれの母語教室や教師によって多様性があり、クラスの分け方、また、教室環境などもさまざまであるが、母語学習のインセンティブを高め、上級生と下級生や言語力の異なる子ども達の混在するクラスで、グループダイナミックスを考えながらクラスを運営する方法など、共有し得る方策を抽出することができた。これまでの研究成果をまとめ、母語学習支援のためのウェブサイトを立ち上げ、ほぼ内容を確定した。 カナダ調査では、母語・継承語のバイリンガル教育の指導的立場にあるJim Cummins教授(Toronto University)、移民の子ども達の幼年期のバイリンガル教育の推進者であるRoma Chumak教授(Ryerson University)等、多くの専門研究者、教育者、教育委員会の教育担当者から現場の実践状況や課題について現地調査を行った。ウェブサイトを通じた発信と連携を行っているChumak教授から、貴重な助言を得ることもでき、今後の協力体制の基礎作りを行った。 タイ調査では、ミャンマー移民児童に対する母語教育が少数の公立学校やNGOによって行われていることが分かった。そして、タイ人児童やタイ人教師に対してミャンマー語学習を行う先進的な試みも行われている状況から、ホスト社会との双方向のバイリンガル教育による支援体制の充実についても考察を行った。
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