研究概要 |
本研究は、日本語能力試験のユニバーサルデザインをより一層実現するため、重度視覚障害受験者に対する点字問題冊子の作成方法を改善することを目的とする。目的に照らし、平成22年度は、日本語学習者(視覚障害者・晴眼者)、および日本語母語話者(視覚障害者)を対象として、以下の調査を行った。 1.解答速度測定調査(1)日本国外で視覚障害者を対象として日本語教育を行っている機関(中国 天津市視覚障害者日本語訓練学校、北京連合大学)および日本国内の視覚障害者教育機関(筑波大学附属視覚特別支援学校(以下、筑波支援学校))の日本語学習者の協力により、旧日本語能力試験(以下、旧試験)〈読解・文法〉の点字問題冊子の解答時間を測定した。(2)杏林大学、北京語言大学の協力により、晴眼者の旧試験<読解・文法>および<文字・語彙>の通常問題冊子の解答時間を測定した。2.聞き取り調査(1)1.(1)の教育機関の協力により、日本点字の学習歴・使用歴、漢字学習歴、日本語以外の外国語学習歴、日本語能力試験の受験経験について聞き取り調査をした。(2)筑波支援学校、恵泉女学園大学の協力により、視覚障害を有する日本語母語話者を対象に、旧試験〈聴解〉問題の(1)イラスト選択肢、(2)(1)を簡素化し、描き直したイラスト、以上を立体コピーし、触図から読み取れることについて聞き取り調査をした。(3)筑波支援学校高等部の協力により、視覚障害を有する日本語母語話者を対象に、旧試験<読解>問題(点字)を使った音読の調査後、読みに迷った語や漢字を含む語について聞き取り調査をした。(4)(2),(3)の教育機関の協力により、視覚に強く依存する話題とは何かを明らかにするための聞き取り調査をした。 以上の調査によって得られた情報をもとに、1.試験時間の設定の妥当性、2.点字冊子試験実施上の問題点と改善方法、3.イラスト問題の出題の可能性、4.話題選定上の配慮、について、平成23年度に分析・検討を進める。
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