日本語能力試験は、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、すべての受験者に公平であるように配慮して作られている。本研究は、受験特別措置の一つである点字冊子試験において、受験者の日本語能力をより適切に測定するための態勢を構築することを目的として行われた。本研究は平成24年度が最終年度であり、3ヵ年を通して、下記の研究を終了した。 1.実施体制 点字冊子試験は試験時間および問題冊子が通常と異なるため、個別会場での実施となる。そこで、試験会場の立会いおよびインタビュー調査に始まる調査研究により、適切な実施体制とはどのようなものかを明らかにした。 2.試験時間延長率の設定 点字冊子は、漢字仮名交じり文の通常冊子よりも文字数が多くなる。また、点字は触読によって一文字ずつ読み進める。そのため点字冊子試験では、試験問題を読み、解答するまでの時間が、通常冊子よりも多く必要となる。そこで、どの程度の延長が妥当であるかを明らかにするために、点字使用者と墨字使用者(晴眼者)の解答に要する速度を測定し、比較、検証した。 3.問題冊子作成方法 点字の特性により、通常の問題冊子をそのまま点字に置き換えるだけでは、試験問題として使用できない場合がある。そこで、試験問題を点訳する際に、どのような配慮と加工が必要になるかを、検討した。 最終年度である平成24年度は、3ヵ年にわたる研究の成果を研究成果報告書『日本語能力試験における視覚障害者受験特別措置改善のための基礎的研究』において総括し、日本語能力試験での研究成果の運用と効果の検証、学会等での成果報告を行った。
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