研究概要 |
本研究の目的は,第2言語(L2)としての日本語と第1言語(L1)としての日本語で書かれた小論文を比較・検討することにより,より広い視野から日本語小論文のgood writingの要素を追求することである。 平成22年度は,前年度科研研究で収集したL2小論文の日本語教師による評価(good writing順位決定中のプロトコルと評価結果)について,Eurosla 20(イタリア),ICPLJ 7(アメリカ)において発表し,論文にまとめた。 L2小論文のgood writingに関しては,「課題の達成」「主張の明確さ」「構成」「談話展開のテクニック」「客観的で広い視野からのサポート」「オリジナリティ」「表現力の豊かさ」等が順位決定要素となっていることが分かったが,どの要素を優先させて評価するかについては,評価者に共通の認識が認められなかった。結果としては,全体的なアカデミックらしさが,「課題の達成」「主張」「全体構成」等の第一義的な要素よりも前面に出て評価される可能性が示唆された。また,プロトコル,評価結果,アンケート内容が必ずしも一致しないことから,評価のプロセスは複雑であることが示唆された。 L1小論文に関しては,計画どおり,データ収集を行った。 L2小論文とL1小論文を比較してみると,共通点もある半面,異なる面もあるようであり,今後以下の観点から分析を行うことにした。 (1) Reader awareness(読み手をいかに意識して書かれているか):Hinds(1987)によるreader responsibilityの言語(例:日本語や中国語)と,writer responsibilityの言語(例:英語)に分けて分析する。 (2) 小論文の構成:マクロな構成(序論,本論,結論)とパラグラフ内の構成(中心文と支持文)に焦点を当て,比較する。 なお,L2データに関しては,英語話者のデータ収集を23年度海外において収集する計画を立てている。
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