研究課題/領域番号 |
22520545
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
宮岡 弥生 広島経済大学, 経済学部, 准教授 (10351975)
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研究分担者 |
時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849)
玉岡 賀津雄 名古屋大学, 大学院・国際言語文化研究科, 教授 (70227263)
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キーワード | 敬語 / ERP / 脳波測定 / 中国語母語話者 / 韓国語母語話者 |
研究概要 |
本研究では、日本語と同様に敬意表現のために特化した言語形式を持つ韓国語と、持たない中国語を母語とする日本語学習者を対象に脳波および反応時間測定実験を行い、それらを比較検討することによって、日本語学習者の敬語理解過程を神経科学的に解明することを目的としている。平成22年度には、まず脳波測定実験と反応時間測定実験で用いる刺激文を完成させた。そして、統制群となる日本語母語話者20名に対して脳波測定実験を実施し、日本語の敬語表現が惹起する事象関連電位(ERP)を指標として、敬語表現を司る制約が語彙と文法のどちらに属するのかについて検討した。文処理に関するこれまでの研究では、統語的な処理については潜時約600ミリ秒の陽性電位(P600)が、また、意味的な処理については潜時約400ミリ秒の陰性電位(N400)が惹起されることが報告されている。本研究において仮にERPのN400が観察されれば、敬語選択を司る制約は語彙・意味的で、P600であれば統語的であることが示される。実験の結果、意味処理に典型的なN400が観察された。つまり、日本語の敬語については、人間関係理解を含む語彙・意味的な制約に基づく高次処理が行われていることが示唆された。この結果は、研究者の間でこれまで議論されてきた、日本語の敬語が語彙的であるのか文法的であるのかという問題に対して、一石を投じるものであると考えられる。また、ERPの頭皮上分布と振幅は尊敬語と謙譲語間でかなり異なっており、敬語種によって処理内容が異なることが窺われた。さらに、高正答率群と低正答率群を比較すると、謙譲語でのN400の出現の仕方が明らかに異なっており、敬語規則の個人差が示唆された。これらの結果は、「日本言語学会第141回大会」などで公表した。
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