2006年度から大学入試センター試験に導入された英語リスニングテストの波及効果を、1.大学入学時の英語力の経年変化、2.英語の学習方法や学習意欲への影響、3.英語指導法への影響、の3つの観点から解明を進めた。 1.大学入学時の英語力の経年変化を、関東圏にある一国立大学入学者全員の英語テスト得点を5年間(2005-2009)にわたって継続調査したところ、リスニングの平均点にわずかではあるが有意な上昇傾向がみられた。リスニングテスト対策開始時期、また英語学習開始時期が早ければ早いほど、リスニングの平均点が高くなる傾向にあった。英検準2級以上取得者の割合の顕著な変化はこの間にはみられなかった。 2.学習方法や学習意欲への影響について、学習者への質問紙調査(約6000名)を行ったところ、プラスの波及効果が認められた。意欲向上やリスニングのコミュニケーションにおける重要性の認識の高まり、リスニング力が伸びたと実感している学習者が6割以上、などが明らかとなった。英語学習方法では、問題集や教材付属のCDを聞くといったテスト対策が中心で、テレビ等の英語講座の活用や英語を普段の生活で聞くといった割合はまだそれほど高くはなかった。一方、英語4技能の学習のうち好きな技能としてリスニングを上げる割合が年々低下する傾向がみられた。 3.英語指導法への影響について、主に高校教員(約60名)への質問紙調査を行ったところ、テスト対策を行うようになった(6割)という以外、顕著な波及効果は認められなかった。高校英語授業は文法訳読が中心と回答した学習者の割合が7割以上で、教員自身も授業でリスニング活動や英語をより多く使用しようという意識の向上は多少見られるものの、テスト導入によって指導法そのものが変化したと回答した割合は低かった。普段の指導法への変化に至るまでにはテスト導入だけでは十分ではないことが伺えた。
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