研究概要 |
本研究の目的は,英語教員を志望する学生対象の『ティーム・ティーチング(TT)能力養成プログラム』の開発である。ALT(外国人指導助手)とのTTは今日の英語教育では極めて一般的であるが,外国語(英語)活動の小学校高学年における必修化に伴い,「小・中英語教育の円滑な接続を目指したALTとのTTの質向上と効率化」は重要な課題である。特に,小学校で主として英語活動を行う担任教師の大半は英語が専門でないため,大学の英語教員養成には,小・中学校の双方で中心となって効果的にTTを行える能力を持つ人材を輩出する必要がある。こうした背景から,本研究では,大学英語教員養成課程において,英語母語話者教員と日本人教員が連携し,「TT能力の要素」を軸に個に応じたプログラムを1年生が新任教員となるまでの5年間のスパンを見通して構築する。 研究の2年目である平成23年度は,主として以下の5つを行った。 (1)これまでに体系化したALTとのTTで日本人教師に求められる技量(TT能力)の要素の見直し (2)英語専攻学生(計43名)を対象とした「分かりやすい英語の授業」の要素に関する質問紙調査 (3)コミュニケーション能力の基礎の育成におけるTTによる言語活動の在り方の考察 (4)個に応じたTT能力養成プログラム構築のための「英語専攻学生カルテ」の作成と継続 (5)「英語専攻学生カルテ」の項目に基づいたデータ収集と分析の続き (1)では,英語力・背景知識・指導力・自己研鑽力の4領域15項目に体系化した要素一覧の見直しを行い,(2)の分析結果との関連性を分析した。(2)では,全教科に共通する「分かりやすい授業」を行える能力と英語の授業に独自に求められる能力の分別とそれらの関連性,および,JTEの単独授業能力とTT能力間の関連性を分析した。また,(3)では,小中学校における授業観察や研究会をとおして,TTによる言語活動の在り方を考察した。これらの(1)~(3)に基づき,(4)と(5)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,体系化した「TT能力の要素」と授業等との対応を行うことができた。この対応には,英語専攻生を対象とした「分かりやすい授業」の要素に関する質問紙調査を行い,その結果も盛り込むことができた。これらを見直しながら,個に応じたカルテの作成と継続を行い,サイクルの展開を継続することができた。また,サイクルの展開における主要なデータの収集ができた。小・中学校における実態把握のため,現職教員および教育実習生のティーム・ティーチングにおける言語活動の観察と分析を行うことができた。以上の成果から,プログラムの構想を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,平成26年度前半まで,引き続き「TT能力の要素」と授業等との対応を行いながら,カルテを作成・継続していく。これらを適宜反映させながら,サイクルを展開し,プログラムの構想および構築を進めていく。特に,学校現場における現職教員と教育実習におけるティーム・ティーチングの観察と分析を一層充実させることにより,英語教師を目指す学生が効果的なティーム・ティーチングを行える基礎的能力を身につけるためのプログラムの開発を目指していく。
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