研究概要 |
これまでの調査から、英語を第二言語として習得した日本人の認知レベルに変化が起こることがわかった。当研究は、日本語を習得した英語母語話者にも同じような変化が思考過程に見られるかを調査する。研究の背景にはImai&Gentner(1997,2002)がある。『形と素材』を識別する心理実験で、日本語母語話者は物を選択する際に『素材』に焦点を当てて選択する一方、英語母語話者は『形』に焦点を当てることが報告されている。更にCook,Bassetti,Kasai,Sasaki,&Takahashi(2006)は、日本人で英語を習得したバイリンガル話者は、日本語母語話者とも英語母語話者とも異なる傾向を示すことを明らかにした。第二言語を習得することにより思考過程に変化が起きることを示唆している。つまり、言語は思考過程に影響を及ぼすことが証明されたのである。Cookその他の調査に参加した被験者はイギリス在住の日本人ゆえ、文化や生活習慣などの影響をのぞくことができなかった。平成19年度から21年度に採択された科学研究費で、Cookその他の調査を補てんする方法で調査を行った。日本に在住する日本人を対象に実験を行い、日本で習得した英語が思考過程に影響を及ぼすことを明らかにした。この結果を信頼性の高いものにするため、当研究では英語母語話者で日本語を習得した人たちを対象に同じ実験を行う。英語だけを話すモノリンガル話者とは異なる傾向を示すことが期待される。 本年度は調査の準備として、(1)実験刺激の充実化(2)被験者の募集(3)試験的実験に着手した。(1)に関しては、心理実験後に計画しているfMRIを使った実験に応用できるものに改良を進めた。またこれまでの心理実験で課題となっていた内容に改良を加えた。(2)と(3)に関しては、改良を加えた実験刺激を用い県内に在住する英語母語話者に参加してもらい試験的な実験を行いデータを収集した。
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