本研究は、英語冠詞学習プロセスについて、機械学習を使用したモデリングと、人間を被験者とした実験研究の両方を融合させて、その学習プロセスを解明しようとするものである。本研究では、コンピュータを使った機械学習によって英語冠詞を事例学習させてその学習達成度を測り、その上でいくつかのアルゴリズム(処理手順)を加えて学習の到達度を評価する。特定のアルゴリズムを使用して学習が促進されたならば、そのアルゴリズムを参考にして、人間の冠詞学習に導入する要因を選び、その要因を変数として操作し、効果的な教授・学習プログラムにつながるかどうかを検討する。これらの情報を統合して、効果的な英語冠詞学習のための介入方法や学習プログラムを提案することを目指すものである。 平成22年度は、冠詞の正しい創出につながる分類ルールを帰納的に学習させるための要因の検討を、人間の学習と機械学習のモジュールに分けて行った。具体的には、(1)第二言語学習者の冠詞選択の様態と誤りの原因の検討と、(2)英語コーパスの選択と学習モデルの検討を行った。 人間の学習モジュールにおいては、英語冠詞を母語(L1)から敷衍して学習ができない言語として日本語を選択し、日本諾をL1とする大学生を被験者として実験を行って英語冠詞を正しく使用する際の要因となる定性と特性を被験者が正しく識別しているかどうかを検討した。 機械学習モジュールでは、英語コーパスをコンピュータに読ませ、正しい冠詞創出につながる分類ルールを帰納的に学習可能かどうかを検討する為の準備を行った。英文コーパスとしてThe Lancaster Parsed CorpusとThe Susanne corpusを選択し、学習アルゴリズムとしてはQ-learningとHidden Markov Model(HMM)を選択した。
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